Tops と Oops
出先から帰ってきた娘が差しだしたのは
赤坂Topsのチョコレートケーキ。
てっきり自分が食べたくて買ってきたのかと思いきや、そういえば娘はクリームの類は一切嫌いだったなと。
夫に似て不愛想で口数が少ない娘ながら、母の思うところはいつの間にかそれとなく心得ていて、思いがけないサプライズは、記念日にうやうやしくもらうものよりむしろ嬉しかったり。
美味しくいただきました。
娘がまだスケートに明け暮れていた頃、スケートの技術的なこと云々では私は一度も娘を叱ったことはありません。
あるとしたら、それはコーチに対する態度とか氷の内外でのマナーとか、スケートが上手なことよりももっと大切だろうと思う事をおろそかにしているような時のみで。
スケートができる環境を当たり前だと思わないで。
コーチに叱られたり練習がうまくいかない時など、不貞腐れる背には何度となく雷を落としました。
いつの頃からか、動物に関わることができる学校に進学したい、将来は動物関係の仕事に就きたいと言い出し、受験をきっかけに競技生活からは離れることになりました。
練習が辛いからなどという理由ならば絶対に許さなかったと思いますが、大人への階段を一歩ずつ上る中でみつけた己の進むべき道なのであればと私はあえて何も言いませんでした。
仕事と母の看病で疲弊しきっていたので、むしろありがたいとさえ思ってしまいました。
最後の進路相談の時でした。
もうこれ以上、苦労もお金もかけさせるわけにはいかない。
私立を受けないと言い出した娘の本心を担任の先生の口から聞いたときは胸が痛みました。
当たり前だと思うなと言った意味をはき違えてやしないかと、それとなく問いました。
娘は飄々と、
動物看護士になりたいから。
というばかりで。
その瞳に迷いがなかったのが救いでした。
そして数年が経った今、
爪に絵を描いていたり、
ジブリ作品に登場するクッキーを真似て焼いたり、
たまに滑ってみたり、
ロージーと駆け回ってたり、
ブーブー文句を言いながらゲームをしてたり、
ニート生活を満喫中です。
リンクの空気よりもさぞかし冷たいであろう社会に吹きすさぶ風雪に煽られて、人生初の転倒です。
靴が消えたり、衣装が破れてたり、ありもしない事実がまことしやかに囁かれたり独り歩きしていたり、摩訶不思議なことが起こるリンクの中同様、割に合わないことというものは人生にままあることです。
丸いリンクを四角に滑っていた頃から懸命に指導して下さり、表彰台を目の前にして何故にOpps判定なのかが謎なスコア表を持ってジャッジ席に乗り込んでいって下さったコーチへの御恩を忘れず、何度氷に叩きつけられても果敢にジャンプに挑んだ日々を思い出して、コロナ騒動が落ち着いたらまた立ち上がって滑り出してほしいものです。
そういえば先日ケーキを焼いた際にTops風に仕上げようとして、ああでもないこうでもないとブツクサ言っていたのを聞いていたのかもしれません。
妹の誕生日に役25年ぶりにケーキを焼いたのです。
25年前は圧力鍋で作っていたので、オーブンで焼いたのは初めてです。
オーブンで焼いてみて初めて気が付きました。
圧力鍋でよく焼いていたなと。
三度に一度はOopsな出来になるので。
また羊かん作ったのか?
と弟に茶化された時には
うん、いい出来でしょ?
食べてみて?
と開き直ってやったものです。
レシピ通りの配合故に味はいけるはずなんです。
食感の問題で。
最近お菓子作りの意欲が再燃中。
リハビリを言い訳に市販のミックス粉を頼りにしてるので偉そうには言えないのですが、計ったり振るったりの手間が必要なく、ものの10分で生地が出来上がるミックス粉はとても便利です。
最初から風前の灯たるこの炎いつ消えるかわかりませんが、手作りの物は自分好みにアレンジできるので、好きなものを食べたいという一心で作り続けるかもしれません。
ちょっぴりOopsな出来なれど、チェックのアイスボックスクッキーがタイルカーペットの配色と被ってるなと思いカメラを向けたら
Topsに可愛い写りこみが。
毎度のことながら親馬鹿発動失礼致します。