ハナよりミズ
夫と娘を連れだって、散歩がてらロージーお気に入りの公園へ。
何がお気に入りなのかといえば、
この池。
トイプードルは別名ウォーター・ドッグともよばれるらしいので、その遺伝子に組み込まれた業なのでしょうか。
躊躇なく水際まで進んでいくのでヒヤヒヤします。
水だけに。
公園内は多種多様な桜が、満開とまではいきませんでしたが八分咲きといった趣でした。
子供の頃、桜の染め物の薄紅色は花弁ではなく樹皮を煮詰めて抽出するのだと何かで読んで知り、いたく感銘を受けたものでした。
あの黒くゴツゴツとした樹皮のどこに儚げで優雅な薄紅色を秘めているのかと。
桜のような人間になりたいと願ったものでした。
現実は根っこに生えた根毛にすらなれない人生ですが、せめて散り際は潔くありたいと思います。
薄紅色の風景にしばし酔いしれた後、パリパリの衣とほどよい塩加減の餡が美味しいと評判の鯛焼きを買って帰宅しました。
そして私は、情緒の欠片もない水があふれ出る鼻腔に点鼻薬を注しました。
わんこもその飼い主も、ハナより団子ならぬハナより水の春です。